タイトル:酷暑のステアリングと、単車線で目指す新宿の病院
2026年8月25日、火曜日。
朝一番からじりじりと容赦のない日差しが降り注ぎ、肌を刺すような熱気が窓越しにも伝わってくる。テレビの画面には「熱中症警戒アラート」の文字が赤々と点滅していた。
今日はかねて予定されていた病院の通院日、あの無機質な機械の中に身を沈めるMRI検査の当日である。普段であれば電車やバスを利用するところだが、この猛暑である。
冷房の効いた車内自体は快適そのものとはいえ、そこに至るまでの炎天下の駅のホームや、日陰のないバス停での待ち時間を想像しただけで、70代の身体は悲鳴を上げてしまう。
熱中症で倒れてしまっては元も子もない。そう思い、今日はやむなく愛車を出して向かうことに決めた。
とはいえ、田舎暮らしの身にとって、車で大都会・新宿の雑踏へ乗り込むのはなかなかに骨が折れるし、正直なところ少し怖い。
何車線も入り乱れる幹線道路や、目まぐるしく車線変更を繰り返す都会の車の流れを思うと、出発前から気後れしそうになる。
そんな私の不安を察したのか、妻――我が家の「バーさん」が助け舟を出してくれた。「無理して広い道を走らなくても、一般道の単車線を選んで、前の車についてトコトコ安全運転で行けばいいじゃない」と。
なるほど、それもそうだ。スピードを競うわけでもなし、慣れない複車線で冷や汗を流すより、のんびりと一本道をマイペースに進む方がずっと性に合っている。妻の生活の知恵というものは、いつだって一番頼りになるナビゲーションだ。
出発まで、あと一時間。 足元では、相変わらず愛犬のえちゃん(レークランドテリア)が静かに丸くなり、出発前の私の落ち着かない気配をじっと見守っている。彼女の柔らかな温もりに触れて心を落ち着かせ、冷たい水で喉を潤す。年を重ねるごとに増えていく病院の予定も、新宿の複雑な道路も、一つずつハンドルを握りしめて慎重に越えていけばいい。
さあ、キーを回そう。安全運転で、新宿の病院へと舵を切る。今日という一日を無事にやり過ごすために。
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