6/21/2026

聞こえぬ雨音と、十二万枚の記憶


「頑張って起きる」というのもおかしな話だが、今朝も私の老体は律儀にいつもの時間通りに目を覚ました。ベッドの中でじっと耳を澄ませても、外からは何の音も聞こえてこない。最近、どうも難聴気味なのだろうか。それとも、この家の防音構造が立派すぎるのか。定かではないが、自分の耳の衰えを家のせいにしておく方が精神衛生上よろしい。

朝活の撮影に出撃しようと窓を開けた途端、「ザーッ」という容赦ない雨音が飛び込んできた。やれやれ、やはり私の耳が遠くなっていただけか。午前3時過ぎには止むという天気予報も見事に外れ、私の「朝活カメラマン」としての顔は思いがけない休日を余儀なくされた。

気を取り直して、いつものルーティーンを始めた。日記をつけ、朝食をとり、愛すべき我が家の老犬、ノエのケアを丁寧に行う。不器用な手つきながらも、この小さな命の世話をしている時間は、私にとって最大の慰めをもたらしてくれる。その後は二階の自室に退避し、静かに勉強の時間を持った。

午前9時を過ぎた頃、ようやく空が明るくなり雨が上がった。この隙を突き、私はバスと徒歩で、朝活の代わりとなる買い物散歩へと出かけた。目的地は100円ショップ。妻から頼まれたコーヒーフィルターと、ノエのケアに使う指先フィット手袋をカゴに入れる。そして、ふと目に留まった旅の備品もこっそりと追加した。

梅雨が明けたら、愛車で一人旅に出ようと密かに計画しているのだ。いつになったら空は晴れ渡るのだろうか。最初の目的地はどこにすべきか。そう想像するだけで、足取りが軽くなる。

帰宅後、昨日から始めている画像ファイル整理との戦いを再開した。昨日3万枚の写真を削除したというのに、私のパソコンにはまだ12万枚という途方もない数が残っている。重複しているものを地道に消去しようとするのだが、進捗は痛ましいほど遅い。削除キーに指を浮かせるたびに、かつて訪れた異国の街並みや、若かりし頃のノエとの思い出が画面に現れ、郷愁の波に飲まれて手が止まってしまうのだ。

曇り空の隙間から太陽が顔を覗かせると、部屋の湿度が上がり始めた。結局、私は涼しい部屋に引きこもり、パソコンを相棒にして午後を過ごした。12万枚の記憶と格闘しながら、次の旅路に夢を馳せる——これもまた、年金暮らしならではの贅沢な時間の使い方なのかもしれない。



Though it sounds strange to 'try hard to wake up,' my aging body dutifully roused itself at the usual time this morning.

Lying in bed, I strained my ears, but no sound came from outside. Am I getting a bit hard of hearing lately? Or is the soundproofing of this house just incredibly good?

I’m not entirely sure, but for my own peace of mind, it’s better to blame the house rather than my declining ears.

Ready for my morning photography walk, I opened the window, only to be hit by the unforgiving sound of pouring rain.

Well then, it seems my ears were to blame after all.

The weather forecast predicting the rain would stop past 3 AM had completely missed the mark, forcing my morning photographer alter ego into an unexpected day off.

Pulling myself together, I started my usual routine. I wrote in my diary, had breakfast, and carefully tended to Noe, our beloved senior dog.

Even with my clumsy hands, taking care of this fragile little life brings me the greatest comfort. Afterward, I retreated to my room on the second floor for some quiet study time.

Just past 9 AM, the sky finally brightened, and the rain stopped.

Taking advantage of the break, I headed out by bus and on foot for a shopping walk— a substitute for my missed morning activity.

My destination: the 100-yen shop. I tossed in the coffee filters my wife had asked for, along with some snug-fitting gloves for Noe's care.

Then, spotting some travel supplies, I secretly added them to the basket.

I’m secretly plotting a solo road trip in my car once the rainy season ends. When will the skies finally clear? Where should my first destination be? Just imagining it puts a spring in my step.

Returning home, I resumed my battle with organizing image files, a task I had started yesterday.

Even after deleting 30,000 photos, a staggering 120,000 still remained on my computer. I painstakingly tried to remove the duplicates, but progress was painfully slow.

Every time my finger hovered over the delete key, a picture of a foreign city I once visited or a memory of Noe from her younger days would pop up on the screen, freezing me in a wave of nostalgia.

As the sun peeked through the cloudy sky, the humidity in the room began to rise.

Ultimately, I spent the afternoon holed up in my cool room, keeping my computer company.

Battling with a hundred and twenty thousand memories while dreaming of the next journey— perhaps this is a luxurious way to spend time on a pension.

6/20/2026

雨音と、15万枚の記憶の迷路


今日は一日中、雨だった。東京の外れで婆さんと「すみっこ暮らし」の貧乏生活を送る私にとって、外出が叶わない雨の日は、どうにも調子が狂う。まるで世界から取り残されたかのように、静けさが老体をじわじわと虐めてくるのだ。

今日1日、我が家の玄関ドアが開く音は一度も鳴らなかった。婆さんはどこかでうたた寝でもしているのだろう。足元では、16歳になる老犬のノエが、丸まったまま静かな寝息を立てている。

では、この引きこもりの一日、私が何をしていたかといえば、ひたすらパソコンと睨めっこである。ボケ防止にとファインダーを覗き、撮り溜めた写真データが、気づけば「Adobe Lightroom Classic」に15万枚以上も膨れ上がっていた。塵も積もればなんとやら、これだけ溜まればパソコンの動きも、私の老体のごとく鈍くなるというものだ。

そこで一念発起、「teekesselchen」なる舌を噛みそうな名前のプラグインを使い、重複ファイルを削除しようと試みた。ネットの海を漂いながら、見よう見まねで使い方を調べてみる。しかし、これがどうにも上手くいかない。消しては元に戻し、戻しては消しの繰り返し。デジタル相手の終わりのない千日手である。

気づけば窓の外は暗くなり、無情にも一日があっという間に過ぎ去ってしまった。結局、疲労感と乾いた目だけが残り、何もできない、何もやっていない一日だった。「ボケまい」と頑張るつもりが、かえって知恵熱が出そうだ。

だが、こんな日があってもいい。何も生まなかった一日も、老い先短い人生の愛おしい余白である。明日の朝の天気予報は、ありがたいことに曇り。あの重たい空気を切り裂くような朝の空気を吸い込み、再びファインダー越しに世界を覗き見るとしよう。予報を信じて、いつもの時間に起きることにする。ノエ、明日も付き合ってくれるかい?

さあ、今日はお終い。そろそろお休みの時間だ。


The Sound of Rain and a Labyrinth of 150,000 Memories

It rained all day today. For me, living a modest life with my wife in the outskirts of Tokyo, a rainy day when I can't go out somehow throws me off balance. It's as if I've been left behind by the world, and the silence slowly torments my aging body.

Not once did the sound of the front door opening echo through our house today. My wife must be dozing off somewhere. At my feet, our 16-year-old dog, Noe, is curled up, breathing softly in her sleep.

So, what was I doing on this day of seclusion? Staring blankly at my computer screen. The photos I had taken to keep my mind sharp had swelled to over 150,000 in Adobe Lightroom Classic. Just like my old body, the computer had grown sluggish.

Determined, I tried using a plugin with a tongue-twisting name, 'teekesselchen', to delete duplicate files. I surfed the web, mimicking the instructions. But nothing worked. I deleted, restored, and deleted again—an endless stalemate with the digital world.

Before I knew it, the window had grown dark, and the day had mercilessly slipped away. In the end, all that remained was fatigue and dry eyes; it was a day where I accomplished absolutely nothing. I thought, 'That's fine. A day that produced nothing is still a precious blank space in my remaining life.'

Thankfully, the forecast for tomorrow morning is cloudy. I'll wake up at my usual time, trusting the forecast. Noe, will you keep me company again tomorrow? Well, that's it for today. It's time to rest.

6/19/2026

塩分とカルガモと、少し短い朝の道


「しまった」と目を覚ますと、時計の針は4時35分を指していた。予定より5分遅れの起床。年をとると目覚めだけはやたらと早くなるものだが、たまにはこんな日もある。

出発前の恒例儀式、血圧測定の時間だ。腕帯を巻き、結果を見る。「上が145、下が77、心拍数66」。上が少し高い。原因は火を見るより明らかである。昨夜、婆さんの目を盗んでパリパリとかじってしまった、あの美味しい煎餅だ。「こんなにも塩分が血圧にダイレクトに影響するのか」と、誤魔化しのきかない自分の体の正直さに呆れつつ、そっとため息をついた。


気を取り直して、いざ出発。今日もお供のカメラは持たず、身軽な格好だ。ポケットにはスティックパン1個、アメ1個、そしてチョコ1個。まるで遠足に向かう小学生のようなおやつのラインナップに、我ながらクスッと笑ってしまう。今日は気分を変えて、いつものコースを時計の逆回りで歩いてみることにした。

The Price of Salty Crackers and a Lone Duck's Mo

少し歩くと、空き地で若者たちが数人たむろしているのが横目に入った。夏が近づくと増える光景だ。「おいおい、学校には行っているのかい?」と心の中で老婆心を覗かせるが、その前に彼らの親はどうしているのだろうと、少しばかり複雑な気持ちになる。


車の多い通りをやり過ごし、水源の方向へと足を向ける。すると、川沿いの道路脇で、金網に首を突っ込んでバタバタともがいている一羽のカルガモを見つけた。必死に逃げようとしているらしい。川の方へ目をやると、別のカルガモが二羽、涼しげに浮かんでいる。やがて首を突っ込んでいたカルガモがなんとか抜け出し、仲間に入ろうと勇んで川へ飛び立った。ところが、川に入った途端、その二羽から激しく追い回され、あわれにも弾き出されてしまったのだ。「お前さんも、いじめられっ子なのかい?」と、羽をすぼめたカルガモの背中に、思わず同情の声をかけてしまった。


川を下り、今度は横田基地の方向へ歩を進める。基地横の道から駐機場を覗き込むと、巨大なC5とC17がそれぞれ一機ずつ、朝の静寂の中で鈍い光を放ちながら鎮座していた。

歩き始めて4キロ。最近はどうにも疲れやすくなった。以前ならなんともなかった距離だが、今日はここらで一休みだ。普段は「1キロ12分」というペースを守っているが、今は無理をせず、スピードを落として距離も短めに切り上げることにしている。老いには逆らわず、上手に付き合っていくしかない。今日はこの辺で帰路につくことにした。約1時間ほどの、少し短い朝活であった。

家に帰り、温かいお茶をすすりながらパソコンに向かってブログを書き始めると、窓の外から「ホーホケキョ」と澄んだウグイスの囀りが聞こえてきた。久々に聞くその声は、疲れた体に心地よく染み渡る。ふと足元を見れば、愛犬のノエが安心しきったように静かな寝息を立てていた。婆さんの起きてくる気配を感じながら、不器用ながらも平穏な「今日」という一日が、また静かに幕を開けた。

6/17/2026

揺れない家と、煎餅への遠い道のり


今朝もまた、4時前に目が覚めてしまった。昨夜の地震の余韻が、老体から眠りを奪ったらしい。

思い返せば、23区のマンションで暮らしていた頃は、震度3もあれば船に乗っているようにゆらゆらと大きく揺れたものだ。しかし、この田舎へ疎開(移住)してきて6年。この家で揺れを感じたのは、昨日が初めてのことだった。どっしりと地に足をつけたこの家は、全然揺れが怖くない。頼もしい限りだが、その安心感とは裏腹に、夜中に「愛車が傷だらけになる」という悪夢を見てガバッと起きてしまったのだから、人間の心とは厄介なものである。


すっかり目が冴えてしまったので、4時少し前に日課の血圧測定。 「上138、下89、心拍数73」 うむ。目標数値にはあと一歩届かないが、徐々に下がってきている。夜な夜な大好物の煎餅を我慢している効果が、少しは出ているのだろう。実は、もし今日目標数値をクリアできたら、ご褒美に車を転がして飯能まで美味しい煎餅を買いに行こうと目論んでいたのだが……残念ながら、今日はお預けである。


気を取り直して、いつものおやつをポケットに忍ばせ、相棒のレークランドテリアと共に朝活へ出発した。 4時半頃、里山の向こうからゆっくりと太陽が顔を出す。駐機場に目をやると、C5が1機、C17が2機。今日は大型貨物機ばかりが、静かに羽を休めていた。


「今日も暑くなりそうだなぁ」 少しずつ白んでいく空を見上げ、ふうと息を吐いて今日の朝活は終了。

婆さんから7時の朝食の号令がかかるまでは、2階の自室に引き籠って、6時30分のラジオ体操と、こうして朝活日記を綴るのが日課だ。 さて、体操が終わったら、また1階の「日常」へと下りていくとしよう。明日は飯能へ行けることを祈って。

6/16/2026

横田基地の軍用機とトイカメラと、下がらない血圧


朝の4時に元気よくベッドから跳ね起きた!パソコンを立ち上げる面倒な儀式はすっ飛ばし、すぐさま出発の準備に取り掛かる。本日の最初のミッションは、大きく3回深呼吸をしてからの恒例の血圧測定だ。上は140、下は90、心拍数は77。昨日からほんのミクロの進歩である。それにしても、どう足掻いてもこの頑固な血圧は下がってくれないので、今日はヤケクソで煎餅でもドッサリ買って、日頃のストレスを発散してやろうかと考えた!


今日の頼もしい道連れは、トイカメラ、スティックパン1本、アメ1個、それにチョコレートが1個。いつものように基地の北側エンドを目指し、パシャパシャとシャッターを切りながら進む。駐機場には、ここしばらくお目にかかっていなかった光景が待っていた。何度見ても、あの機体の配置は「命」という漢字そのものにしか見えないのだ!C-5、C-17、KC-135、そして横田基地をねぐらとするC-130にCV-22。なんて壮観なメカニックの顔ぶれだろう!


私は歩みを進め、愛機キヤノン・パワーショットNの遊び心あふれる「トイカメラ」モードで、朝露に濡れた草花を写真に収めていく。やがて川沿いの道にぶつかり、帰途についた。梅雨時の雨で小川の水はすっかり泥濁りしており、当然ながら住人のカワセミたちの姿はどこにもない。


それでも、基地の向こう側に、頂をほんの少し白くお色直しした富士山が顔を出していた。最近ではめったにお目にかかれないご褒美だ!「今日は暑くなるぞ」と、私は独りごちた。


1時間30分、距離にして7キロメートル。カメラを片手にした、なんとも素晴らしい朝のパトロールであった!