血圧計の液晶が、無機質に156と99という数字を弾き出した。
思わずため息が漏れる。このまま朝活の途中で、
心筋梗塞か何かでポックリ逝ってしまうのではないか。
そんな死への不安が頭をよぎるのも、七十代という老いぼれた年齢のせいだろう。
だが、こんな数値を気にして布団に丸まっていては、本当に心が老け込んでしまう。
私は昨日、眼科の帰りに買ったあんぱんとチョコレートを一つポケットに忍ばせ、
重い腰を上げた。
まだ寝息を立てている妻と、老犬のえちゃんの頭を心の中で静かに撫でてから、
愛機のカメラをぶら下げて玄関を出る。
梅雨の長雨のせいで川はすっかり濁ってしまい、
清流を愛するカワセミさんの姿は最近見かけない。
里山の小道もぬかるんでいて、先日もつるりと滑って転びそうになったばかりだ。
そんなわけで、最近の散歩コースはもっぱら横田基地の北側へと固まりつつある。
ビュンビュンと車が行き交う幹線道路を渡るのはひどく億劫だが、
これもボケずに生きるための日課である。
フェンス越しに駐機場を覗き込むと、
C40Aが1機、チャーター機に、KC135とRC135が羽を休めていた。
その横を通り過ぎようとした時、空気を震わせるような轟音が響き渡った。
基地から飛び立ったC17輸送機が、灰色の空を切り裂くように舞い上がっていく。
「気をつけてな」 南の空へと向かっていく巨大な翼を見上げながら、私は小さく呟いた。
あちこちガタがきている私の体も、こうしてまだ歩けるうちは、
あの飛行機のように前を向いて進めるかもしれない。
少しずつ太陽が顔を出し、じわじわと夏の暑さが首筋を撫でる。
ポケットのあんぱんを思い出しながら歩いた、
六キロ、一時間強の散歩道。今日も私は、生きている。

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