5/28/2026

『五月の熱風と、小さな決断』

 暦の上ではまだ五月だというのに、吹き抜ける風にはすでにまとわりつくような湿り気があり、肌をじっとりと撫でていく。庭に面した掃き出し窓を細く開けても、部屋に忍び込んでくるのは夏を急ぐような生温かい空気ばかりだ。

部屋の片隅では、相も変わらずのえちゃんが丸くなって眠っている。私たちでさえ堪えるこの暑さは、分厚い毛皮を纏った老犬にはさぞ身に堪えるだろう。静かに上下する小さな背中を見つめながら、私はふと、私たち家族が重ねてきた時間の重さを思った。

このところ、のえちゃんの食がめっきり細くなった。体重が落ちていくのを恐れ、婆さんは何とか食べさせようと躍起になっている。夕餉の折、様々なものを細かく刻み、混ぜ合わせては口元へ運ぶ。その手には、不器用だが切実な祈りのような愛情が握りしめられているのだ。のえちゃんもそれに応えようと懸命に呑み込むのだが、やはり老いた胃の腑が受け付けないのだろう。吐き気と闘うように苦しげな仕草を見せるのえちゃんを前に、私たちはついにひとつの決断をした。

無理強いはやめよう。食べたい時に、食べられる分だけを、何度かに分けて。それが、今のこの子にとって一番の「正解」なのだと。

明日は歯医者へ行く日だ。一時間に二本しかないバスの時刻表を老眼鏡越しになぞりながら、帰りの南武線で座れるだろうかと、ちっぽけな不安を抱える。不便なこの家を出て、早く終の棲家を見つけたいとこぼしながらも、地震ひとつ揺れないこの頑丈な古い家を手放すのはどこか惜しくもある。


老いゆく犬と、年老いた妻と私。不便さも、愛しさも、迷いもすべて丸ごと抱え込んで、私たちの静かな夏が始まろうとしている。

『【敗北】朝活カメラマンの憂鬱:幻のパンを求め6キロ彷徨い、膝の痛みに負けて路線バスに寝返った男の記録』

 

水分をたっぷりと溜め込んだ夏の重たい風が、まるで明確な殺意を持って私を狙撃してくる朝である。 そもそも「朝活」などという健康的な響きの言葉は、老体に鞭打つ過酷な行軍を誤魔化すためのペテンに過ぎない。今日はいつもの川沿いをひたすら下るルートを選んだ。川面を撫でてくる風が新緑の青臭い香りを運んでくるのは悪くないのだが、どうも膝の調子がおかしい。湿度のせいだろうか、一歩踏み出すごとに膝の関節がギシギシと不穏な悲鳴を上げている。まったくもって由々しき事態だ。

目の前に見えてきた橋を渡り、ここまで付き合ってくれた川とお別れをする。ここからが過酷な陸上戦の始まりだ。 行く手に立ちはだかるのは「微妙な傾斜の坂道」である。若者なら鼻歌交じりで駆け上がる程度の斜度だが、こちらの老体にとってはヒマラヤのデスゾーンに等しい。頂上に着く頃には息も絶え絶えになり、ゼエゼエと肩で息をしながら無様な小休止を取る羽目になった。交差点の信号を睨みつけ、青に変わると同時に重い足を引きずって目的地へと突入する。

自動ドアの向こうは、あらゆる雑貨が渦巻く資本主義の底なし沼「100円ショップ」である。 しかし、ここには強力なエアコンという神の恩恵があった。熱をたっぷりと溜め込んだ私の肉体を、冷気が一気に冷却していく。バーさん(妻)から下された絶対的な指令(おつかい)の品と、私のささやかな買い物をカゴに放り込む。これが本当に100円玉一枚で買えるのか。裏で恐ろしい陰謀が動いているのではないかと毎度疑うのだが、事実は事実だ。

次なるミッションはパン屋である。しかし時計はまだ正午前。パンが焼き上がっているかどうかが勝敗を分ける。 勇んで店に突入したが、私の欲するパンの姿は棚のどこにもなかった。痛恨の空振りである。無念の思いを噛み殺し、次の目的地である図書館へ向けて行軍を再開する。 すでに6キロを踏破している。膝はいよいよ限界に近い。あと少し、あと少しだ……と自分を鼓舞していたその時、目の前の停留所に一台のバスが滑り込んできた。プシューというドアの開く音が、私を甘く誘惑する。朝活ウォーキングという当初の崇高な志は一瞬にして木っ端微塵に砕け散り、私はなんの躊躇もなくその鉄の箱へと吸い込まれていった。完全なる敗北である。

平日の午前中、図書館は暇を持て余したような静寂に包まれていた。 予約していた3冊の活字の塊に加え、ふと目についた1冊を追加し、合計4冊をリュックにねじ込む。ズッシリとした重みが肩に食い込む。 そういえば、私は今日「朝活カメラマン」として意気揚々と家を出たのではなかったか。しかし、iPhoneのカメラロールを確認すると、そこにはモワッとしたどんより空を恨めしそうに撮った1枚の画像しか残されていなかった。帰ったらよく冷えたビールでも飲んで、さっさと昼寝をしてしまおう。そんな哀愁と少しの虚無感を背負い、私はバスに揺られて帰路につくのである。


 "It is a morning where the heavy summer wind, bloated with moisture, seems to snipe at me with clear murderous intent.\n\nTo begin with, a healthy-sounding word like 'Asa-katsu' (morning activity) is nothing more than a scam to gloss over a grueling forced march that flogs an aging body. Today, I chose a route marching steadily downstream along the usual river. It's not so bad that the wind brushing the river surface carries the grassy scent of fresh greenery, but there is something wrong with my knees. Perhaps due to the humidity, my knee joints let out ominous, creaking screams with every step I take. It is an absolutely grave situation.\n\nI cross the bridge visible ahead, bidding farewell to the river that had kept me company thus far. From here, the brutal ground war begins. Standing in my way is a 'slope with a subtle incline.' For the youth, it's a gradient they would sprint up while humming, but for this old body, it's equivalent to the death zone of the Himalayas. By the time I reach the summit, I am gasping for air, forced into a pathetic short rest while heaving by my shoulders. Glaring at the traffic light at the intersection, I drag my heavy feet into the destination the moment it turns green.\n\nBeyond the automatic doors lies the bottomless swamp of capitalism, swirling with all sorts of miscellaneous goods: the '100-Yen Shop.' However, here lay the divine blessing of a powerful air conditioner. The cold air instantly cools down my body, which had accumulated a massive amount of heat. I toss the items for the absolute directive (errand) handed down by the 'Baa-san' (wife), along with my own modest purchases, into the basket. Can you really buy this with a single 100-yen coin? I always suspect some terrifying conspiracy is operating behind the scenes, but a fact is a fact.\n\nThe next mission is the bakery. But the clock hasn't struck noon yet. Whether the bread is baked or not will decide victory or defeat. I bravely charge into the store, but the bread I desire is nowhere to be seen on the shelves. A bitter swing and a miss. Biting back my chagrin, I resume my march toward the next destination: the library.\n\nI have already covered six kilometers. My knees are nearing their absolute limit. Just a little further, just a little further... just as I was trying to inspire myself, a route bus smoothly glides into the stop right in front of me. The 'pshhh' sound of the doors opening seduces me sweetly. The original, noble aspiration of an Asa-katsu walk is smashed to smithereens in an instant, and without a single moment of hesitation, I am sucked into that iron box. It is a complete and utter defeat.\n\nOn a weekday morning, the library is enveloped in a silence that seems to have too much free time. I shove a total of four books—three reserved chunks of printed text, plus one that happened to catch my eye—into my backpack. A heavy, solid weight digs into my shoulders.\n\nCome to think of it, hadn't I left the house in high spirits today as an 'Asa-katsu photographer'? However, checking my iPhone's camera roll, there is only a single, lethargic image of the muggy, gloomy sky, taken with a sense of resentment. Once I get home, I'll just drink a well-chilled beer and take a nap right away. Carrying such sorrow and a slight sense of emptiness on my back, I rock in the bus on my way home.",


【決断】猛暑の朝活か、大谷vs菅野の死闘か。

 『100均とフランスあんぱんに翻弄された男の午前中ロードムービー』


そもそも「朝活」などというこじゃれた言葉は、どうにも背中がむず痒くなるのである。 すでにジリジリと気温が上がり始めた空を恨めしく睨みつつ、私は玄関で立ち尽くしていた。一眼レフという重火器は放り出し、今日はiPhoneという薄っぺらい板切れのみをポケットにねじ込んだ「単独軽装カメラマン」としての出撃である。準備は万端なのだが、ここで由々しき問題が発生した。移動手段として原始的な「徒歩(ウォーキング)」を選ぶか、近代文明の利器「自転車」に頼るかという、壮絶な脳内会議が幕を開けたのである。

行く手に立ちはだかるのは「午前10時の壁」だ。 生活必需品を補給するため、100円ショップというあらゆる雑貨が渦巻く魔窟の攻略は必須。さらに、オープンと同時にパン屋へ突入し「フランスあんぱん」という魅惑の糖分塊を無事に捕獲しなければならない。そして帰路には街の図書館に立ち寄り、椎名誠、三浦しをん、重松清という活字の三巨頭を借り受けるというミッションも控えている。

なぜ私が自転車か徒歩かでここまで苦悩しているのか。それはタイムリミットが「正午12時」と厳格に定められているからである。 12時。太平洋の向こう側では、ホワイトソックスの菅野とドジャースの大谷というサムライたちによる、血湧き肉躍る投げ合いがプレイボールを迎えるのだ。これを見逃す手はない。徒歩の歩兵部隊で進軍すれば、時間はカツカツのデッドヒートになる。自転車の機械化部隊ならば機動力は格段に上がるが、朝のウォーキングという当初の崇高な目的が木っ端微塵に砕け散る。

結局、時間的制約と己の肉体的軟弱さを考慮し、私はママチャリに跨がった。 しかし戦場は甘くはなかった。100均の魔力に当てられて不要な便利グッズまで買い込み、パン屋ではフランスあんぱんの甘い香りに敗北して余計なパンまでトレイに乗せてしまった。極めつけは図書館である。ハードカバーを含む三冊の本の重量が、リュックを通してずっしりと肩に食い込む。灼熱の太陽の下、汗だくになりながら必死でペダルを漕ぐ姿は、もはや敗残兵の無惨な撤退戦であった。

どうにか12時少し前に部屋へ転がり込む。 ドッカリと座り込み、冷えた麦茶を喉に流し込みながらテレビのスイッチを入れる。画面の向こうではメジャーリーガーたちが涼しい顔で対峙しているが、こちら側はすでに疲労困憊で目の焦点が定まらない。買ってきたばかりのフランスあんぱんをわしわしとかじりながら、なんとも言えない哀愁と虚無感のなかで、私の休日は静かに過ぎていくのである。

Frankly, the fancy term "morning activity" makes me feel uneasy.

I stood frozen in the entryway, glaring resentfully at the sky, where the temperature was already rising steadily. I'd abandoned my heavy weapon, the DSLR, and today I was deploying as a "lightly equipped solo photographer," with only my flimsy iPhone crammed into my pocket. I was fully prepared, but a serious problem arose. A fierce internal debate began: should I choose the primitive method of "walking" as my mode of transportation, or rely on the modern convenience of "bicycle"?


Standing in my way was the "10 AM wall."


To replenish my necessities, conquering the 100-yen shop, a labyrinth of all sorts of goods, was essential. Furthermore, I had to storm the bakery as soon as it opened and successfully capture that tempting sugary lump known as "French Anpan." And on the way back, I had a mission to fulfill: a stop at the city library to borrow books by the three giants of the written word: Makoto Shiina, Shion Miura, and Kiyoshi Shigematsu.


Why was I agonizing so much over whether to cycle or walk? Because the time limit was strictly set at "12 noon."


12 noon. Across the Pacific Ocean, the thrilling pitching duel between the samurai, Sugano of the White Sox and Ohtani of the Dodgers, would begin. I couldn't miss this. If I advanced as an infantry unit on foot, it would be a neck-and-neck race. A mechanized unit on bicycles would have significantly increased mobility, but my original noble purpose of morning walking would be shattered into a million pieces.


Ultimately, considering the time constraints and my own physical weakness, I mounted my city bike.


However, the battlefield was not so easy. I succumbed to the allure of the 100-yen store, buying unnecessary gadgets, and at the bakery, I succumbed to the sweet aroma of French anpan (sweet bean paste buns), adding extra bread to my tray. The final straw was the library. The weight of three books, including a hardcover, dug heavily into my shoulders through my backpack. Under the scorching sun, my desperate pedaling, drenched in sweat, resembled the pathetic retreat of a defeated soldier.


I somehow managed to collapse into my room just before noon.


I slumped down, gulped down some cold barley tea, and turned on the TV. Major League baseball players faced off with cool expressions on the screen, but I was already exhausted, my eyes barely focused. As I munched on the French anpan I'd just bought, my holiday quietly passed by amidst an indescribable sense of melancholy and emptiness.

5/27/2026

物言えぬ老犬と、めまいのジーさん。今年の夏も一緒に乗り切るための決意

 照りつける日差しが日ごとに強さを増し、

気温も湿度も急上昇する季節となりました。

「昨年のような、これまでの日本とは思えない苛酷な夏がまたやって来るのだろうか」と、

ニュースを見ながらため息をつく今日この頃です。


我が家には、年老いた私と同じように、

すっかりお爺ちゃんになった16歳のレークランドテリアがいます。

私なら「暑い」「エアコンを入れてくれ」と口に出して婆さんに頼めますが、

愛犬は言葉を話せません。ハアハアと息をする小さな体を見ていると、

「なんとか今年も一緒に、この夏を乗り切りたい」と強く願うばかりです。


さて、今日は自動車運転免許の更新手続きのため、

バスを乗り継ぎ青梅警察署へ出向いてきました。

せっかくなので時代の波に乗ろうと「マイナンバーカードとの一体化」

を希望していたのですが、世の中そう甘くはありません。

窓口を見ると、大勢の申請者に対して担当者がたった一人で事前説明に追われています。

あの行列に並んだらどれだけ時間がかかるか……と早々に白旗を挙げ、

今回も今まで通りの免許証で更新することにしました。

おかげで予定よりうんと早く家に帰り着くこととなり、婆さんにも驚かれました。


気温の上昇に伴ってか、最近は血圧が下がってきており、

一瞬「お、体調が良くなったのかな」と勘違いしそうになります。

しかし現実はそう都合よくいきません。胆のうを摘出した影響なのか、

少し食べると腹腔鏡手術をした4か所の傷跡がプクッと膨れてお腹が痛むのです。

「いつものことだろう」と病院にも行かずに済ませていますが、

心の片隅では少しばかり心配もしています。

いや、それよりも怖いのは、毎日のウォーキング中の熱中症です。

時々めまいがして立ち止まることが多くなってきたので、無理は禁物ですね。


なんだかあちこち痛い、苦しいと暗い話ばかりになってしまいました。

しかし、当の本人である私は至って明るく、「なるようになるさ」の精神で生きています。

良くも悪くも、もはや全てにおいて自分の意思だけで決められる時期は過ぎました。

人生の終盤戦、抗えない老いも暑さも、丸ごと受け入れて楽しんでやろうと思っています。

5/26/2026

不安な時代の「朝活カメラマン」:電気点検と遅れたウォーキング

 朝から太陽は雲に隠れているのに、蒸し暑さが容赦なく続く一日でした。

昨日の血圧測定にビックリして今朝は恐る恐るの血圧測定

結果は125.80心拍76と上出来の結果で気分を良くして

きょうが始まりました。



月曜日だった妻(バーさん)の買い出しは、


私の病院健診のため一日遅れて今日に。


さらに今日は電気の点検予定日であり、家を空けることができません。


最近は強盗や特殊詐欺などの物騒な事件が多く、


うかつに他人を信用できなくなっています。


インターフォンのモニターで社員証を確認し、


窓のカーテンを全て閉めて対応しました。


こんな対応をしなければ信用できないとは、


本当に大変な時代になったものです。



妻の帰宅を待ってから


ようやく私の朝のウォーキングが始まりました。


久しぶりに横田基地方面へ行ってみようと家を出ましたが、


やはり蒸し暑い。この暑さでは熱中症の危険があると思いつつも、


iPhoneのカメラを片手に、飛行機や草花を撮影しました。


ゆっくりと歩きながら、今朝は「朝活カメラマン」として活動しました。